住むことでわかる住み心地のよさが魅力の街づくりを目指す「まちあい徳山」
「株式会社まちあい徳山」は2010(平成22)年に設立された。徳山商工会議所・商店街・周南市の出資によった誕生した同社は、街づくりに関するさまざまなことに関わっている。今回は同社の設立の背景や実際に徳山の街での取り組み、思い描く徳山の街の未来について、代表取締役の河村 啓太郎さんにお話を伺った。
――まずは、「株式会社まちあい徳山」の概要についてお聞かせください。
河村さん:弊社は、徳山商工会議所・商店街・周南市の出資により2010(平成22)年に設立されました。周南市の中心市街地における都市機能の増進や、経済活力の向上に取り組むマスタープラン「周南市中心市街地活性化基本計画」が策定される前のことですが、会社の設立には、市と民間の行う事業に対し、有利な条件で補助金をいただくための“まちづくりに関係する会社”が必要だったという背景がありました。
――「徳山」駅周辺では、さまざまなイベントが開催されるようですが、その中でも特に反響のあったものを教えていただけますか?
河村さん:徳山商工会議所、商店街、また「周南市立徳山駅前図書館」の指定管理者である「カルチュア・コンビニエンス・クラブ」さんのイベントを含めると年間200件近くのイベントが開催されます。前述の「活性化基本計画」を遂行していくために設立された「周南市中心市街地活性化協議会」に、街と暮らしに関係する企業や団体がイベントについての情報を共有する組織体があり、そのなかでうまれたイベントもたくさんあります。
河村さん:ビアフェスティバル、中山間地域の事業者・農家による地域マーケット、子どもが商店街で職業体験をする「こどもっちゃ!」、さらにはファッションショーやハロウィン、イルミネーションをはじめ、季節を感じさせるものなど実に多種多様です。
河村さん:AIカメラでデータを取ると、「徳山夏まつり」と駅周辺を100万個ものLED電球で彩った「周南冬のツリーまつり」が特に人流が多いことがわかりました。どのようなイベントをいつ、どこで開催するのかという情報は、「活性化協議会」を通じて各団体が共有しているのが特徴だと思います。
「徳山」駅周辺の商店街の未来を考える活動
――商店街への出店推進にも取り組まれているようですが、商店街の現状について教えてください。
河村さん:空き店舗は下げ止まっているものの店舗数はまだまだ少なく、組合員の高齢化も進んでいるので現状は厳しいと言わざるをえません。しかし我々の考えとしては、商店街の維持だけを目的とするのではなく、それ以上に重要なことは、商店街を時代に合ったかたちにすることです。
商店街というのは、共同販促による相乗効果で利益を増やしていく組織ですが、現代においてこの形態に経済合理性があるのかという視点に立てばまた別の考えが出てきます。エリアマネジメントという観点で、ただちに解散するというハードランディングではなく、創意工夫により、できることから行っていく姿勢が必要ではないかと思います。
――お答えいただいたことと矛盾する質問かもしれませんが、テナントの“誘致”について希望されることはありますか?
河村さん:各々がSNSというメディアを有する時代において、出店場所は関係なくなりました。市外であっても、集客できるお店にはぜひ来ていただきたいと思っています。それがイベントに協力的で、街づくりに関してオープンマインドで取り組んでくれる方であれば嬉しいですね。
徳山の街の未来について
――再開発事業にも取り組まれているとのことですが、徳山エリアをどのようにしていきたいとお考えでしょうか。
河村さん:「徳山」駅周辺はアクセス性に優れたエリアですので、マンションの建設が進んでいることにも納得できます。聞くところによると、郊外に住んでいる方の住替え需要が大きいようですので、我々としても“住まう場所・暮らす場所”をキーコンセプトに、コンパクトシティとしてのあるべき姿を目指し、自動車に乗らなくても生活できる街づくりに貢献できればと思っています。
――国や自治体・民間との架け橋としての役割を果たされていますが、官民共同で取り組まれている事業はありますか?
河村さん:「活性化協議会」のなかに部会をつくり、「徳山」駅からつづく目抜き通りの「御幸通(みゆきどおり)」という自動車が走っている中央部分を公園空間にしたらどうかという社会実験を実施しました。
他には、街を掃除する「徳山あちこちクリーンプロジェクト」という取り組みもしています。200人規模の活動にまで成長し、街づくりに関係する方のコミュニティづくりに役立っているように感じています。
――貴社が運営されているWebメディア「Tokuyamap」についても聞かせてください。
河村さん:2018(平成30)年に「徳山駅前図書館」が開館したことで、そこを目的に多くの方がやってくるようになりました。以前から必要性を感じていましたが、そのタイミングでより街を知ってもらうためにWebメディア「Tokuyamap」を立ち上げたのです。
当初の目的だった月間10万PVは、開設から1年で達成。コロナ禍につくったテイクアウトやデリバリーに対応しているお店を紹介したページは、月間45万PVまで伸びました。
この街での暮らしや、イベント、新規出店の情報を発信することが、20年後、30年後の街の価値を高めていくと考えています。
――ここからは、街の魅力について伺っていきたいと思います。徳山エリア、特に「徳山」駅周辺の魅力やおすすめスポットを教えていただけますか?
河村さん:初めていらっしゃる方には、まずは「周南市立徳山駅前図書館」をご覧いただきたいですね。それと少し離れますが、改修中の「周南市徳山動物園」もおすすめです。コンパクトに見て回れる規模で、動物を間近に見ることができます。
また、おすすめできるグルメ店もたくさんあります。洋食の名店「アラスカ」、手打ちうどんが人気の「くうかい」、鶏そばの「カヲル」、汁なし担担麺の専門店「階杉周南店」などが人気です。
その中でも個人的には、老舗喫茶店「赤鬼」の「焼めん」を強くおすすめしたいですね。これは、瓦の上で茶そばを焼いて食べる瓦そばをアレンジしたもので、茶そばではなく海藻を練り込んだうどんを使用することが特徴です。あまり知られていないのですが、ぜひ一度、召し上がっていただきたい私の大好きな料理です。
――最後になりますが、これから徳山の街に住むことを検討している方に向けて一言お願いします。
河村さん:徳山には企業や工場が多いため“稼ぐ力”のある街で、結果として道路網が整備されているなど生活・経済基盤がしっかりしています。実際に全国的な知名度を誇る名産品や、わかりやすい名物はありません。ただ派手さはないものの、住むと居心地のよさを感じる街だと思います。“どこにでもありそうで、実はない街”という表現が、徳山を形容するうえではふさわしいかもしれませんね。

株式会社まちあい徳山
代表取締役 河村 啓太郎さん
所在地:山口県周南市銀南街4
TEL:0834-33-9612
URL:https://machiai-tokuyama.com/
※この情報は2025(令和7)年1月時点のものです。