異文化に触れ、子どもの個性を尊重し伸ばす手助けをする「岩国東幼稚園」

街の玄関口である駅舎が全面改築で生まれ変わり、これからの期待感も高まる「岩国」駅周辺。「岩国航空基地」関係の住人が多いことでも知られており、そうした地域性を反映して幼稚園や保育園にもインターナショナルな雰囲気があふれている。そんな岩国の玄関口のすぐ東側、山口県の教育のモデル地区にもなっているというこのエリアで1929(昭和4)年に開設された長い歴史を持つ「岩国東幼稚園」の冨津田教頭にお話をうかがった。

「東っこ」を育む教育理念

岩国東幼稚園
岩国東幼稚園

――まずは園の概要と保育理念をお聞かせください。

設立は1929(昭和4)年、園児は現在180名で、この近隣では大規模の部類に入ると思います。当こども園は「清く、正しく、たくましく」という仏教理念の園となっています。1歳児から幼稚園まで子どもたちの人格形成の基盤をしっかりと作っていこうと心がけています。幼稚園では生きる力につながる、学びの基盤づくりを軸とした教育に力を入れています。

――送迎バスはどのあたりまで出ているのでしょうか?

2台のバスで東は広島の大竹市から、西は御庄・尾津・平田・川下(かわしも)・麻里布(まりふ)、この「岩国」駅周辺の人絹街(じんけんまち※かつて紡績が盛んだったことから付いた通称)までをカバーしています。

――どんな子どもたちが多いでしょうか。

学区になる「岩国市立東小学校」へは主に3つの幼稚園の卒園児が入学するのですが、当園の子どもたちは「元気にあいさつができる」とか「先生が話を始めるとしっかりと聞き入る」と小学校の先生からお褒めの言葉をいただきます。幼稚園から小学校への環境変化があっても馴染むのが早い子が多いようです。

園内の様子
園内の様子

――子どもたちと接する際に先生たちが心がけていることを教えてください。

子どもたちの気持ちを汲み取ることです。「指導」ではなく「手助け」をしてあげるというスタンスを大事にしています。これは子どもたちの自主性や自己解決力を形成するためで、子どもたちの個性を尊重しながら、力が伸びていくように、そっと背中を押してあげるということを大切に考えています。子どもの代弁者である保育者のサポートのもとで、子どもたちが興味を持ったことをつぶさに受け取って、それを日頃の保育に活かしたています。

多様性のある街ならではのコミュニケーション

――「岩国航空基地」関係のアメリカ人の子どもたちもたくさんいるようですね。

海外の方は自己を大切にするという文化の傾向があり、自己主張をきちんとできる子が多いのが特色です。言葉のやりとりで不自由なところがあっても、先生も子どもも、言葉以外のアイコンタクトや身振り手振りを使って意思疎通をしようと努めています。工夫をしてお互いの意思を伝えることで、信頼関係の構築ということに関しては、当園のように外国籍の子どもが多い環境のほうが、より学ぶ機会は多いと思っています。また保護者の方との連携も英語の先生を通じて、しっかりと行うように努めていますので、子どもたちが日本の幼稚園で負担なく、伸びやかに過ごせてもらえたらいいなと考えています。

異文化の子どもたちが仲良く過ごしている
異文化の子どもたちが仲良く過ごしている

――アメリカ人の保護者の方から、日本の幼稚園に入られたことへの反応はいかがでしょうか?

日本の幼稚園はアメリカの幼稚園より行事が多いようで、アメリカでは個々の活動で完結してしまうところが多いけれど、日本では学んだこと・覚えたことを行事として取り組むことが多いので、協調性や他人を思いやる心がとても良く身につくとおっしゃっていただきます。それから遊びに関しての幅広さがあると驚かれます。向こうは作られた物や施設で遊ぶというのが基本ですが、日本だと泥や砂を触って遊んだり、虫を捕まえたり、芋ほりをしたり、木の一本や葉っぱから何かを作ってみたりとか、ペットボトルのような廃材を利用した遊びなど、そういう遊びの幅、イマジネーションの幅が広いことに皆さん驚かれるようです。

“伸びやかに”個々の可能性を広げる手助けとして

――さまざまな取り組みを行っておられるようですが、まず造形や音楽活動についての取り組みに関して教えてください。

造形や音楽表現に関しては子どもたちの自己表現の可能性を広げる手段として取り入れています。絵を描く、音で表現する、リトミックのように感じたことを体で表現するなど、いろんな表現のスキルを身につけることができれば、子どもたちの自己表現や可能性が広がりますので、そうした部分を個性豊かに伸ばしてあげたいと考えて取り組んでいます。

子どもたちが描いた絵
子どもたちが描いた絵

――「うんどう遊び」に関してはいかがですか?

実は最近、幼児期の体力不足が叫ばれています。総合的な運動力は知力や精神面の育ちにも比例するという研究が幼児体育の研究機関から報告されています。そうしたところを踏まえて、子どもたちには平衡感覚や脚力など「うんどう遊び」という体を使った遊びを通じて知力・精神面の発達を図っていこうというカリキュラムを組んでいます。体を使って発散することは何よりもいい効果を生むと思いますし、自分の体を使ってできることの幅が広がるということは、単純に知力・体力という言葉の括りで語る以上の可能性があると考えています。また体の大切さを重要視して栄養のバランスのいい独自の手作りの給食を実施しています。

運動力を伸ばすカリキュラム
運動力を伸ばすカリキュラム

――英語教育に関してはどうでしょうか。前述の通り英語に触れ合う機会は多いと思いますが。

おっしゃるとおり、岩国という地域性があるからこその英語教育を行っていきたいと考えています。英語を話すことができるようになる、ということだけでなく、日本人は日本語を話すけど、アメリカ人は英語を話す、ということがお互いの文化、アイデンティティの基本になっているんだという、異文化への相互理解にもつながっていくようにできたらいいなと。そういう部分にも重きをおいた英語教育を行っています。

新しいメディア教育への取り組みも公開!

――メディアとの研究事業にも取り組まれているということですが、どのようなことを行っているのですか?

NHKとの共同企画で放送番組の企画や提案を頂いて、こういう活動を幼児教育に取り入れてみましょうという取り組みを行い、発表会も行う予定にもなっています。
『ノージーのひらめき工房』という番組があるのですが、そこでは作り方を教えるのではなく、それを使ってどんな遊びができるのかを考える、ということを行っています。例えばトイレットペーパーを使ってどんな遊びができるのかな?というようなことです。子どもたちがメディアで見た感覚を自分だけの知識に収めるのではなく、それを友達どうしで共有することによって、さらに発想の幅が広がるという面白い取り組みです。

もうひとつは『しぜんとあそぼ』という番組です。動物や昆虫の生態を観察する番組ですが、一方的に見せるだけではなく、紹介する素材は季節などタイムリ―に提供することになっています。例えば夏だとセミというようにですね。そうすると子どもたちはすぐに外に出てセミを見つけてこようとします。実際の生活体験と結び付けられるようなものを紹介します。私たちは「視聴覚教育」と呼んでいて、当園では実はパソコンなどを使った「パソコン遊び」から変化したものなんです。

自然を体験する研究事業
自然を体験する研究事業

――パソコン教育に変わって、ですか?

そうなんです。パソコンはもう今では家庭に一台はあるのが当たり前で、それまで幼稚園で行っていたような「触って慣れる」というような教育コンセプトは古くなっています。そういうわけでこの「視聴覚教育」を新しいメディア教育として取り入れることにしました。メディアを原体験とコラボレートするというコンセプトです。

――「きららルーム」の開設や預かり保育の実施など、子育て支援についても教えてください。

「きららルーム」は2004(平成16)年から始めました。その当時、未就園児の子どもを持つお母さんたちが、子どもと常に一対一でないと安心して外で遊べないという状況が強くなっていました。そうした状況を踏まえて、未就園児の子どもを対象に安心して過ごせるプレイルーム、あそび場を提供しようということがきっかけとなって始まりました。様々な子育て情報の発信基地としての機能も兼ねています。お母さんたちの中には初めて子育てと向き合い、不安を抱えている方も多くいらっしゃいます。私たち保育の専門者は「こんなことしたら子どもは喜びますよ」ということを知っていますので、そういうちょっとしたコミュニケーションや相談をしていただくこともできます。預かり保育は働くお母さんが増えていらっしゃいますので、保育園並みのサポートを提供しなくては大変だということで、1歳から6歳までの預かり保育を午後6時まで行っています。

きららルーム
きららルーム

――最後に、「岩国」駅東口エリアの魅力をお聞かせください。

この岩国周辺は地域の結びつきがすごく強いところだと思います。子どもの教育に関しても「東っ子」と呼ばれていて、地域で育てていこうという昔ながらの考え方が今も根付いています。青年会や自治会の活動も活発で昔ながらのお祭りも賑やかに開催します。お祭りにも幼稚園・小学校・中学校が参加できる仮装行列や神楽の催しもあったり、街全体を地域の住民で盛り上げていこうという気概の残る街です。
子育てに関しても他の都会のようにお母さんが1人で孤立するというような状況も少ないのではないかなと思います。街中に公園がたくさんあって子どものあそび場にも困りません。それから幼・小・中との教育の連携が良いことも特徴ですね。「岩国市立東小学校」と「岩国市立東中学校」は間もなく小中一貫校に生まれ変わりますし、この東地域は山口県の教育のモデル地区になっています。教育も充実して、とっても人の温かみを感じる街だと思います。

岩国東幼稚園
岩国東幼稚園

岩国東幼稚園

冨津田香教頭先生
所在地:山口県岩国市三笠町2-2-16
URL:http://www.higashi-youchien.ed.jp/
※この情報は2018(平成30)年10月時点のものです。